ししかわです。
社員研修の一環で、マイクロマウスを自作して大会に出場します。
前回は回路ブロック図を使って回路の概要を説明しました。
今回は電子回路初心者の私が回路図を書けるようになるまでに行った学習について紹介します。
本を読む
まずは体系的な知識を得るために本を読みました。以下オススメの書籍です。
はじめての電子回路15講
秋田純一 著
電子回路理論の入門書は数多くありますが、本書は「平易な言葉づかいで書かれている」「実践的な例が多く載っている」と紹介されていたので手に取ってみました。
とても分かりやすいです。理論に深入りしすぎず「ここは一旦置いといて先に進みましょう」的な説明の仕方もバランス感があると思いました。
Kicad Basics 5.0/5.1
小坂貴美男 著
回路CADソフト「Kicad」の入門書です。回路設計ソフト「Eeschema」から、基板のフットプリントを作成する「Pcbnew」、さらには基板発注まで、本書に沿ってKicadの使い方を一通り学べます。
こちらもスクリーンショットが豊富で分かりやすいです。Kicadを始める人は必携の一冊といってもよいです。
マイクロマウスブログ
もちろん、マイクロマウスの回路の作り方を学ぶためにマイクロマウスブログは外せません!
みなさんは最近、ブログ連載のまとめページができたことに気づいたでしょうか?次のページから連載毎の一覧にジャンプできます(一部の連載は整理中です)。
先人が回路を作っていた頃の記事を読み、真似することで知識を蓄えます。ESP32やSTM32を含む回路の引き方としてマイクロマウス自作研修(kora編)、ESP32マウス(shota)を特に参考にしています。
データシートと仲良くなる
データシートとは製品の技術的な特徴を記述した仕様書です。回路にどの部品を使うかを決める「部品選定」ではデータシートを読み解く力が必要です。
あらゆる電子部品にはデータシートが付いています。ここには定格(流して良い電流の最大値など、部品の使用条件)や部品内部の回路ブロック図など、部品を回路に組み込むために必要な情報が網羅されています。
最初は分からない用語だらけで正直面食らいますが、何種類か見ていくうちにデータシートの書き方の約束みたいなものが徐々にわかってきます。
また、初心者は「アプリケーション」の項に注目するとよいです。ここには部品を回路に組み込む際に参考になる情報が多く載っています。たとえば私が電源で使う予定のDCDCコンバータ「TPS562209」のデータシートを見ると、部品周辺の推奨回路図や、抵抗値の計算方法などが載っています。
先人の作例を見る
ありがたいことに回路図をGitHub等で公開しているマウサーの方が多くいます。回路設計や部品選定の参考にしています。幾つも横断して見ることで、マウスごとの特徴や共通して見られる構造などが分かるので興味深いです。
回路図をレビューしてもらう/質問する
「書かないと上達しない」のはプログラミングも回路設計も同じですね。
基礎知識をおさらいした後は、ひたすら回路図を書いて経験値を溜めていくほかありません。
機械設計のときは(3Dプリンタが自由に使えたので)設計と確認のサイクルが早く回せましたが、
基板の場合は自分で実装するにしても、基板製造業者に作ってもらうにしても時間がかかります。
また、回路CADにも自動チェックツールは付いていますが、チェックできるのは必要最低限の項目だけです。例えば抵抗の値が1箇所違っているだけでも、自動チェックを通過しながらICが煙を吹くような回路が簡単にできあがってしまいます。
したがって、人の手による回路図の入念なレビューが必要です。
アールティでは社内wikiに「回路レビューでのチェック事項まとめ」を作っています。wikiの中身をそのまま公開はできませんが、とても便利に使っています。複数人のレビューだけでなく自己レビューの時も、チェックリストを順に点検することで誤りに気づけます。例えばM5Mouseの回路図も、
- 配線がオープン(電源にもGNDにも繋がっていない状態)に意図せずなっていないか
- プルアップ/プルダウン抵抗を入れ忘れていないか
などはチェックリストを使って確認できました。
とはいえ、ノイズや熱などの観点はセルフチェックだけでは難しく、経験豊かな人にチェックしてもらうのが最も確実です。アールティには回路や機械つよつよなエンジニアの方がたくさん在籍しているのでとても頼もしいです。
また「今更聞けない」的な初歩的なこともチャットでがんがん質問しています。基本的なことに思えても他の研修受講生が知りたいことかもしれないし、エンジニアの皆さんは1聞いたら10教えてくれる感じなのでめちゃくちゃ勉強になります。
周りに教えてくれる人がいるような恵まれた環境でないと、完全な独学でやるのはかなり厳しい…というのが率直な感想です。SNS等コミュニティの繋がりなどで補えるとよいですが、なかなか難しいですね。
以上です。技術そのものの解説ではないですが、何から手を付けたらよいかわからない初心者の方に参考になればと思います。