こんにちは、しおたにです。
前回モータと車軸の固定方法についてまとめました。
ギアで回転を伝達させる機構の際に考慮しなければならないことがもう一つあります。
バックラッシ
歯車を噛み合わせる際、全く隙間が無いと互いに干渉し合って回ることが出来ません。
このため、歯面間にはある程度の”隙間”をあけておく必要があります。この”隙間”をバックラッシと呼びます。
バックラッシが大きすぎると振動や騒音の原因となり、バックラッシが小さいと伝達効率の低下や歯車寿命の低下につながります。
↑法線方向のバックラッシと歯厚、圧力角
”隙間”が無いとうまく回らないということは確かなので設計の際は
- 歯車がなめらかにまわること
- 歯車を加工する際の誤差や組立時の誤差があること
- 運転時の発熱により若干膨張すること
といった点を考慮して組立後にいい感じに空くようにする必要があります。
どれくらいの量にすればちょうどよいのかは正直なところ分かりません…
強いて言うならば、組立後に回してみて抵抗が大きくないか、異音や振動はないか、ガタは大きくないかといったことをみて判断します。
参考ですが、協育歯車工業株式会社(KGでおなじみ)による技術資料によるとモジュール0.9以下のギアのバックラッシは0.02〜0.06[mm]になるように歯厚を調整して作られているそうです。
参考ページ(技術資料の25ページ)
バックラッシの調整方法
バックラッシの調整方法は
- 歯厚を薄くする
- 軸間距離を広くする
の2つの方法があります。
歯厚は薄くした分だけバックラッシを大きくできます。
軸間距離を広くする場合、設定したい法線方向のバックラッシを\(j_{n}\)としたときに必要な半径方向の遊び(軸間距離から広げる量)\(j_{r}\)は圧力角\(α_{n}\)を用いて次の式で計算できます。
\begin{align*}
j_{r} = \frac{j_{n}}{2\sinα_{n}}
\end{align*}
バックラッシを変えられるようにする
ここからは設計の話です。
そもそも最適なバックラッシ量は…
先ほども書きましたが、マイクロマウスに適したちょうどよいバックラッシ量はよくわかりません。
また、ギア含め関連部品を自作するため、計算通りのバックラッシになるかは微妙なところです。
じゃあ一体どうするか…
バックラッシを調整できる構造にしよう
作る過程でバックラッシを決められないなら組立時にバックラッシ調整ができるような構造にします。これによって加工時や組立時の誤差を吸収することができます。
良いバックラッシ量かどうかは動作時のモータの電流値や音などから判断します。
先ほど紹介したバックラッシの調整方法はギアを自作するためどちらも使えそうですが、今回はモジュールが0.3であり歯がとても小さいため歯厚は薄くしたくありません。
このため軸間距離を広くするやりかたで調整したいと思います。
先ほどの例を参考にバックラッシを0.02~0.06[mm]とし、圧力角を20[°]て計算してみると、軸間距離を広げる量は約0.03~0.09[mm]でした。つまりこれくらいの幅で調整できれば良さそうです。
今回の構造
モータの固定部分を見てみます。
前回、モータのボスで位置決めをすることを紹介しました。
実は、この位置決め箇所は縦長になっており、若干モータを上下させても位置が決まるようにしています。
ネジ穴もネジに対して若干大きく開いているためモータの固定位置を変えることができます。
これでどうバックラッシが調整されるのかというと、下図のように軸間距離がかわることによって調整されるようになります。
設計上はこれで0.03[mm]ほど軸間距離を前後させることが出来ます。バックラッシ調整幅でみると約0.04[mm]となっています。
あとは組み立てた際にガタの大きさや回転させた際のモータの電流値、音、振動などから良い位置に調整します。基本的にこれらは小さいほど良いでしょう。
まとめ
今回は細かな部分についてでしたがまとめると2点です。
- 歯車を嚙み合わせる際はバックラッシを考慮しよう
- 理想のバックラッシが分からないか作れないときは調整できる構造にしよう
ギアの基本的なところでしたが参考になれば幸いです。
今後ですがあと数回は設計に関して、その後加工について書こうと思います。
(回路…?まだ先になりそうです)