こんにちは、しおたにです。
前回、目標とするスペックを達成するには減速比を1:3.5~4にするとよさそうということが分かりました。
今回は設計上の制約を考えながらギア比を決めたいと思います。
基本構成
足回りの構成はオーソドックスなタイヤに回転を伝えるギアの間にピニオンを入れる構造です。
ギア比を決めるにあたり制約や気にしたいことがこちらです。
- ギアはタイヤより大きくできない
- 軸間距離を短くしすぎない
- ピニオンは大きくしすぎない
- 互いに素の歯数にしたい
当たり前のことも多いですがまとめてみたいと思います。
ギアはタイヤより大きくできない
当たり前のことですが、タイヤにギアを直結する構造では、タイヤよりも大きいギアをつけると地面にギアが当たってしまいます。ギアの歯先円直径よりもタイヤ径が大きくなるようにしましょう。
なぜわざわざ注意するかというと、設計時はギアの基準円直径をよく考えるからです。
軸間距離を考えるときに、
( ピニオンの歯数 + ギアの歯数 ) × モジュール/2
から求めることができますが、
( ピニオンの基準円直径 + ギアの基準円直径 ) / 2
で求めることもできます。
基準円直径さえ押さえておけばギアの位置関係が決まるので簡単ですが、歯先円直径のことを忘れがちです。ギアの大きさ=基準円直径などと考えてしまうとタイヤからギアがはみ出すことになります。
歯先円直径は、
基準円直径 + モジュール×2
で求まるのでこれがタイヤ径より大きくなっていないことを確認しましょう。
軸間距離を短くしすぎない
軸間を短くしすぎると、タイヤ同士が当たります。今回の場合はタイヤとモータ軸が一直線に並んでいるため、モータ軸がタイヤの間に飛び出しており、これらが干渉することになります。
軸間距離 > タイヤ半径 + モータ軸半径 + 数ミリの余裕
となっていることは一応確認した方がよいと思います。
またタイヤは遠心力によって若干膨らんだり、走行時の衝撃でわずかに動いたりするので余裕を持った軸間距離にしたほうがよいと思います。
ピニオンは大きくしすぎない
以下の条件に当てはまる場合は参考になるかもしれません。
- ピニオンを圧入する
- マウンタを交換しそうな気がする
ピニオンを圧入すると分解が難しくなります.試作段階など他の部品が変わる可能性がある場合、ピニオンをつけたままモータが取り外せるようにした方がよいと考えています。
このためピニオンはマウンタにあけた穴を通れるくらいの大きさにしなければなりません。
使用するモータはΦ10の円上に取り付け用のねじ穴があります。ねじの太さを考えるとΦ8程度の穴が限界でしょう。よってピニオンの大きさはΦ8を通れる程度が限界となります。
もちろんこのときも歯先円直径を考慮しましょう。
互いに素の歯数にしたい
互いに素とは2つの整数をともに割り切れる整数が1のみになることを言います。
つまり、ギアとピニオンのそれぞれの歯数の最大公約数が1になる組み合わせということです。
互いに素ではない場合を考えてみます。
ピニオンの歯数が10、ギアの歯数が20のようなとき、ギアが1回転する度に同じ歯が嚙み合わさります。
頻繁に同じかみ合あわせがあると、歯車の位置ずれや歯形のわずかな違いによって摩耗具合が偏ってしまいます。これにより特定の歯だけ大きく削れて壊れやすくなったり、歯車を交換した際に嚙み合わせが悪くなったりということが起こります。
一方でピニオンの歯数が10、ギアの歯数が19といった互いに素の組み合わせの場合は、
嚙み合わせが毎回変わっていきます。このため、摩耗の偏りを少なくすることができます。
最近の歯車の加工精度はかなり高く気にしなくても良くなっているという噂を聞きましたが、今回はギアを自作するつもりなので考慮したいと思います。
ギア比を決める
これらの制約を考慮し、減速比が1:3.5~4になるギア比を決めます。
まず使用するモジュールですが、小さくするほど歯先円も小さくできるので強度上問題ないギリギリの小ささにしたいところです。先駆者たちは0.3や0.5を採用しているようでしたので、今回は0.3にしたいと思います。
というわけでギア比ですが、
20:73にすることにしました。
減速比は1:3.65になります。
また、
タイヤ径25[mm]に対して、ギアの歯先円直径は22.5[mm]
ピニオンの歯先円直径6.6[mm]
モータ軸とタイヤとの隙間は1.3[mm]
となっています。
今回はここまで。