ししかわです。
社員研修の一環で、マイクロマウスを自作して大会に出場します。
今回からマイクロマウスの基板設計を始めます。前回までで作ってきた回路図をベースに「どんな部品を使うか」「部品をどう並べるか」「銅箔パターンをどのように接続するか」などを決めて、プリント基板(PCB)のレイアウトを作成していきます。プリント基板の説明は次のサイトが詳しいです。
プリント基板(PCB)とは? | プリント基板ネット通販P板.com
M5Mouseの基板は、M5Stack本体に重ねる拡張モジュールとして設計します。M5StackはGPSやUSBホストなどの様々な機能を、拡張モジュールを使うことで追加できます。この拡張モジュールが自分で設計・実装できるようになると、できることの幅がぐっと広がります。マイクロマウスを作る予定の無い方にもおすすめです。
完成したもの
ブログの執筆が遅れていますが、今は基板設計と製造業者への発注まで完了しています。
完成した基板のイメージは次のようになっています。M5Mouseの基板は、電池を接続して電圧変換を行う「電源ユニット」と、センサ・モータ・マイコンなどが載っている「マウスユニット」の2つに分かれています。2つの基板は繋がっていますが、面付けといって2種類の基板を同時に製造するためのテクニックです。この状態で製造して、最後に切り離します。

マイクロマウス基板(裏)

マイクロマウス基板(表)
基板設計から実装の流れ
「そもそも基板って個人で作れるの?どうやって作るの?」という方も多いと思います。ここで基板の設計から実装の流れをおさらいします。フローチャートにすると概ね次のような順番になります。前提として回路設計が終わって、回路図が手元にある状態を想定しています。

基板設計・実装のフローチャート
基板設計
Kicadを使う場合、概ね次の手順で進めます。
回路図にフットプリントを割り当てる
フットプリントとは電子部品を基板に配置するためのデータで、部品をはんだ付けするための銅箔、ピンを通すための穴(ドリルデータ)、部品の外形などがひとまとまりになったものです。具体的にどの部品を使うか選定して、それに対応したフットプリントを割り当てます。
基板の外形を描く
機械設計の際に決めた寸法に従って、基板の外形を描きます。ねじ穴やセンサをはめる穴の位置なども先に描いておきます。
基板上に部品を配置する
センサやマイコン、チップ抵抗等の部品を基板上に配置します。
配線
部品間に銅箔パターンを引いて接続します。電源とアナログ信号 > 等張配線が必要なもの > デジタル信号など大まかな優先順位があります。
実際には一発で部品と配線の位置を決めるのは難しいでしょう。部品を並べ替えたり試行錯誤しながら進めます。
レビュー/修正する
基板レイアウトをレビューしてもらい、必要に応じて修正していきます。端子やスイッチ等の向きが正しいかどうかなどは3Dビューも活用しながら進めます。
ここまででレイアウトが完成しました。
基板実装
実装と言っても自分で銅箔基板を削るわけではなく、プリント基板製造工場に製造を外注します。この際部品の実装までやってもらうかどうかで2つ選択肢があります。
- 基板のみ発注する場合:部品の調達と実装を自分で行う必要があります。
- 基板にプラスして実装サービスを利用する場合:部品の実装まで終えた完成品が届きます。
今回は中国のプリント基板製造メーカーであるElecrowにて、基板製造と実装サービスを利用しました。

Elecrowの基板製造サービス:https://www.elecrow.com/pcb-assembly.html
BOM(部品表)作成
回路のどの部品が何個必要かを表にまとめます。
実装サービス申し込み
Elecrowのメール窓口とWebサイトを利用して実装サービスを申し込みます。必要な情報が揃えば後は待つだけです。
通常1ヶ月程度で基板が届きます。
参考
基板を自作するにあたり参考にした書籍やサイトです。
- ThousanDIY:「1000円あったら電子工作」がキャッチフレーズのThousanDIYさんは自作のM5Stackモジュールを多く制作されています。スイッチサイエンスから購入できるほか、モジュールの回路図やケースの3DデータをGitHubで公開されています(例:SONYのSPRESENSEとM5Stackをつなぐモジュールなど)
- Kicad Basics:回路CADソフト「Kicad」の入門書です。回路設計に引き続き基板設計でも本書を熟読しながら進めます。Kicadを使う人は買いましょう。
以上です。次回から基板設計、基板実装について詳しく説明していきます。