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マイクロマウスを研修に使う理由

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こんにちは。アールティの社長のyukiこと中川です。

今年度からブログを拡充しはじめまして、おかげさまでショップブログ、マイクロマウスブログも順調な滑り出しとなりました。

松崎が研修で始めたマイクロマウスのブログを見て、お客様や他社からマイクロマウスについていろいろ反響をいただいています。それで、なぜアールティがマイクロマウスを全社員の研修に取り入れるようになったかを記事にさせていただきました。(ご注意:長文なので読むのに時間かかります。)

結論から言うと、マイクロマウス研修は「全社員共通の話題を持つ」ということにつながり、社内をまとめていく上でとても効果的です。
とはいえ、大変な面も多々ありますので、弊社の取り組みを元にしたこの記事が何かの参考になれば幸いです。

ロボット屋の社員研修について

この記事を読んでる方の中にも、アールティはなぞの会社と思っている方はきっと多いでしょう。
アールティの仕事内容としては、部品販売85%、残り15%が受託開発というところです。このくらいの比率になるともはや販売代理店がメインの会社だと思われています。そのため、知る人ぞ知るで受託を依頼されますが、実は弊社は自社製品を作るために先端技術の開発には余念がありません。(例えば、日本ではほとんど報道されることがありませんでしたが、2011年のGoogle I/O(Googleが米国サンフランシスコで開催する展示会、Googleが世界中からセレクトしたグループのみが展示を許可される)では日本企業として初めて基調講演で社名を呼ばれた企業となり、2012年にも連続出展させていただきクラウドロボティクス関連の展示をしました。)

そこで、まず、ロボット屋さんとはなんぞや?というのを説明します。

マイクロマウス迷路の組み立て

ロボット屋さんは、一口に言えば、回路設計、ソフトウェア(組み込み、アプリ等多種)、メカ、組み立てまでがワンストップ、または一部だけでお願いできる試作屋さんです。開発仕事としては、機能試作が多いですが、まれに1万個とかという量産も依頼されることがあります。大体の場合は、ほぼ試作レベルの1、2個~数10個くらいまでの依頼がほとんどです。

試作屋と言ってるのに量産も頼めるの?と思われる方もあるかもしれませんが、弊社の場合は自社製品を持っていますので、生産が可能です。例えばマイクロマウスのハーフサイズの柱と壁などは2009年の発売以来延べ3万セット近く生産している実績もあります。

試作をするということは、見たことも無いものを作ることが多く、同じものを頼まれることはほぼありません。また、他社とプロジェクトを組むことも少なくありません。こういう場合、社員に求められる実力は、高度な基礎技術と想像力、コミュニケーション能力になってきます。

実はロボット屋にとって、ハードの性能を使い倒せるソフトウェアが作れることが一番重要で、そのソフトウェアの性能を引き出すためのハードウェアの設計が次に重要です。つまり、ロボットに使われる多岐に渡る分野の知識を持って絶妙なハーモニーでロボットを作り出せることが肝要です。

そして、試作で大事なことは、クライアントとのコミュニケーションにおいて相手が何を言いたいのか、見抜く力でもあります。この両方を体得するための研修って、なんだろうと思われる向きも多いと思いますし、これだと研修のしようが無い、と思われる方もいるかもしれません。

ここでマイクロマウスの出番になります。

マイクロマウスとは

マイクロマウスは、1980年代に始まった日本で、もしかしたら世界でももっとも古いロボット競技会です。詳しい説明は主催団体のニューテクノロジー振興財団に譲りますが、日本の全国大会が事実上の世界大会です。

地方大会でデビュー

マイクロマウスは、小型の迷路解析用ロボットです。競技自体がタイムを競うため、スピードの出る車輪型がもっとも多いですが、過去には2足歩行で出場した参加者やFPGAで自前でCPUを設計して出場してくる猛者もいます。つまり、規定の範囲内であれば、どんなロボットでも出場してもよいのです。この「どんなロボットでも」がポイントで、想像力を働かせればどんなロボットでも出場できるのがマイクロマウスの魅力です。

ロボットシステムとしてのマイクロマウスは、回路設計1割、メカ設計1割、のこりの8割がソフトウェアだと言われています。上位に食い込む参加者は組み込みだけでなく、ログを解析するためのシミュレーターを自分で作ったりするので、PCアプリケーションの作成にも長けています。ただ単にロボットを作るだけでなく大会に出場するためにプロジェクト管理も含まれてくるので、マイクロマウスは個人で作れるシステムとしてはマネジメントまで含めたかなりの基礎技術を押さえた形でコンパクトにまとまっています。

マイクロマウスを作ると言うと、ハードウェアを作っているように聞こえるかもしれません。
実際に社内で使うのはキットですので、弊社の研修は、ハードの作り方と言うよりもこの組み込みソフトウェア等のロボットの仕組みや考え方、エンジニアとのコミュニケーション、マネジメントを教えることがメインなのです。
Pi:Co Classic
使用しているキット「Pi:Co Classic」詳細ページはこちらを参照してください。

就職率にみるマイクロマウスの産業界からの評価

アールティは、マイクロマウスの協賛企業でもあり、ハーフサイズマウスの公式迷路を生産販売するオフィシャルショップでもあります。
そのため、弊社にも学生アルバイトがいますし、来店される学生のお客様もたくさんいらっしゃいます。就活の時期になると相談に乗ったり、いろいろなお話を伺ったりするのですが、マイクロマウス参加者と他のロボット競技会の参加者の内定について聞くと、このご時勢にマイクロマウス参加者はほぼ4-6月くらいに決まってしまいます。また、何社も内定を持っている方が多いです。一方で、他のロボット競技参加者はかなり苦戦してるようです。就職内定率から見てもマイクロマウスの技術を持った参加者の素質は産業界でも高く評価されていることがわかります。

チャンピオンクラスと交流

実際に、マイクロマウスは、毎年1000人くらいが参加し、実際に大会に出場するのは400チーム程度です。しかし、初回以来30数年を経てなお進化し続けるマイクロマウスは、タイムアタックであるため、ライバルは他の参加者ではなく、去年の自分よりも0.01秒でも早い設計やソフトを作る、という自己研鑽の大会でもあります。

そのため、コミュニティでの技術交流も盛んです。上位陣になればなるほど、自分よりも高い技術を習得するために上位の人たちと交流するし、下位の人たちからも聞かれるのでコミュニケーション能力も高い人が多いです。弊社の研修でも、最終目標は全国大会に出場することですが、度胸試しと調整に全国7箇所である地方大会にも参加させて、交流をすることを義務付けています。

マイクロマウス出身者には、大手電機メーカーや車産業、さまざまな分野のトップエンジニアや工場長、技術部長になっている方も多いのです。ちなみに、大手メーカーさんとお話しするときでも、海外でトップクラスのロボット屋と話をしても、マウスの話になれば過去の参加者だったり、実はやってみたかったんだよねとお話が通じたりすることが多いです。

マイクロマウスが他のロボット競技者の間でも「いつかはやってみたい競技」となっていることからも、いかにマイクロマウスの技術的な評価が高いかがわかっていただけるかと思います。そして、マイクロマウスのスピリッツは、受講者にやる気があればどんな分野の方でも指導者がいれば教えられるのです。

研修の目的

新人の研修目的は、次のとおりです。

  • はんだ付けなどの基礎技術を学ぶ(基礎技術の習得)
  • ロボットに使われる技術(ロボットテクノロジー)とは何ぞやという概略を学ぶ(基礎知識の習得)
  • ロボット競技会での交流を通じて、仲間やお客様のユーザーとしての気持ちを知る(マーケティング)
  • 社員は全員マイクロマウスをやっているので、誰にでも質問して社内に溶け込めるよう共通の話題を持つ(コミュニケーション能力の育成)
  • ロボットを好きになってもらう(ここ一番大事)

なつかしの試作機

そして、実は教える社員にも研修になっています。
その課題はずばり「ロボットを作る楽しさを自らが体現し、教えることで自分の知識をブラッシュアップし、研修を受ける新人にロボットが楽しいと思わせること」です。これはとても難しいことです。

このような研修で実施されている内容は、先生になる社員や新人含めて、社内研修のための必須条件じゃないかと思っています。

松崎が時々私に、「研修がこんなに楽しくていいんでしょうか?」と聞いてくることがあります。この感想は先生になっている社員の評価につながりますから、「ロボットが楽しいと思わせること」に成功しているのでとてもいいことと思います。

運用のデメリット

アールティでは、出身が文系だろうが理系だろうが元漫画家だろうが関係なく社員教育で全員にマイクロマウスを作らせています。(ちなみに入社する前からマイクロマウス全国大会2位になるような実力者も社員にはいるので、そういう新人には意外かもしれませんが能力にあわせて二足歩行ロボットが研修です。)実際、技術者でもない広報やWEBショップの営業担当にまで手間隙コストをかけて何でそんなことさせるの?というお声も多いです。

広報スタッフもデビュー

こんな研修をやっていると、たしかにコストはかかります。
弊社の場合は自社キットや社内リソースの迷路等を使うので、キット代としては原価分だけですが、マウスの大会のある11月までほぼ半年以上毎日午前中を使って研修をするのですから、研修を受ける新人、先生になる社員の人件費や大会への派遣費用だって馬鹿になりません。正直に言うと、弊社では新人研修に午前中を当ててしまうので、先生になるスタッフの開発や仕事量が減るというデメリットがあります。

しかし、コストをかけても得られるものが確実にあります。

たとえば、売り文句だけ仕込まれてる営業さんより、実際に作ったことのある営業さんから買うのとではずいぶん心証が違いますよね。実際に大会に出て参加者目線で作る広告のほうが、ユーザーがほしい情報がわかりますよね。

知識で知っていてやればできることと、やったことがあることは大きな違いです。

海外取引も多くしているアールティだからこそ言える事ですが、日本のお客様は、消費者としては非常にレベルが高いです。やはり消費者としては、ロボットを作ったことも無い人から買うより、きちんとした知識を持ったスタッフからの情報なら安心して買い物ができると言うものです。

共通の話題を作るメリット

社員研修はマイクロマウスだけではありません。レベルに合わせて二足歩行ロボットの製作や写真にあるように、見聞を広めるためにロボットレストランなどのロボット関連のショーや、通常のロボット大会なども社員研修や出展で見に行ったりしていますから話題には事欠きません。

全社員でこうした技術的な共通の話題を作ることは、大きなメリットがあります。

ロボットレストラン見学

*まずは社内のコミュニケーションツールになること。
たとえば、社内のマニアックな技術担当者とも打ち溶け合える話題が提供でき、ロボットを作る楽しさを一人でも多くのお客様に語れるエヴァンジェリストとしての基礎知識にもなります。社員全員が教えあえる雰囲気があるのはとてもよいことです。

*社員がうちはもしかしてイケてる企業なんじゃないか?と思えること
弊社の場合は10時始まりなので、午前中をかけるといっても8時間就業のうちの2時間ほどです。とはいえ、Googleなどのイケてる企業が次世代のイノベーションのために就業時間の20%を自分のために使うというのを考えれば、弊社は25%なのでかなりいいと思います。

*全員が営業できるようになること
「技術者は営業ができない」ということを言う方もいますが、本来、営業の基本というのは、自分が自信を持って、自分も使いたいと思える商品をお客様にお勧めする、そういうことだとおもいます。共通の話題、好きなものは、技術者だってお勧めできます。

なんて、えらそうに言っていますが、自分が学生時代からやってきたことを社内に勧めてるだけなのかもしれません。w

Life with Robotの実現に向けて

アールティのミッションは、「Life with Robot(ロボットのいるくらし)」を考えて提案していくこと。
このミッションは、当時の全社員で考えて作ったものです。

Life with Robot

生活の中のロボット、まだまだ家の中にロボットがいるご家庭なんてそうはありません。
ロボットを通じて、自分の生活にこんな技術があったらいいな、というのを自分で思いつくためにも、自分の身の回りにある電化製品がどんな技術でなりたっているのかを知るにもマイクロマウスの研修は役に立ちます。

アールティの研修は、いろいろなスタッフが入っては辞めしてたころに、社員の研修にもなって共通の話題になるものは何かと私なりに悩んで、考えて始めたものです。文系も入社してくる規模になっても、夢は大きく海外に支店ができたとしても全社員共通の話題が持てるように、また、ロボットを扱うシステム屋としての原点を忘れないためにもマイクロマウスを取り入れています。

実際、アールティ社内では、マイクロマウスが共通の話題であり、また、仕事上で技術的な内容でわからないことがあったりすると、マウスだとこうしてるよね。という例えにも使ったりします。

マイクロマウスなどの研修を通じて、「アールティらしさ」を体得し、Life with Robotに通じる提案がし続けられるよう、社員は日々努力しています。

以前、知人、友人に「アールティってどんなイメージの会社?」と会社のイメージを聞いたことがあります。
ほとんどの人が、「次は何をするかわからない会社」といい意味での驚きがあると言ってくれました。
そういった答えを聞いて、少しは、Life with Robotにつながる提案ができているのかなと思いました。

私は、社長としてこういった研修を通じて、それぞれの役割に応じて商品や機能の目利き、お客様に喜ばれる対応、先端技術の製品開発や受託開発ができる社員を育てて行きたいと思っています。

今回の記事がマイクロマウスが気になっている方々にお役に立つことを願って書いてみました。
まだまだ至らない点も多い会社だとは思いますが、皆様の暖かいご支援を賜れば幸いです。

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