前回の記事では、3Dプリントした拡張ユニットの組み立てを行いました。今回の記事では、その内部に搭載するRaspberry Pi拡張基板の製作と、ロボット全体の配線を行っていきます。
DCDCの搭載
KXR-L2に使用されている制御基板RCB-4miniの電源電圧は6~12Vです。また、使用されているサーボモータKXR-3300シリーズの電源電圧は6~7.4Vとなっており、これらを踏まえてKXR-L2は2セルのLi-Feバッテリー(6.6V)での運用が通常の仕様となっています。
これに対して、Raspberry Pi Zero 2Wの電源はカタログでDC5V 2.5Aと指定されています。もし2セルのLi-Feバッテリーから直接Raspberry Piに電源線を繋いだら過電圧により壊れてしまうでしょう。Raspberry Piの破損を避けつつロボット全体の電源の共通化を図るために、DCDCコンバータを用いて、5Vまで降圧することにします。
DCDCコンバータは、Pololu社製の5V 2.5A降圧型定電圧レギュレータ (D24V22F5)を選定しました。 Raspberry Pi Zero 2Wの電源の要求にちょうど合致しており、5.3~36Vまでの入力電圧から一律で5Vを出力してくれる便利なDCDCコンバータです。
Raspberry Piとの接続には、前々回の記事の物品リストにもある拡張基板を用います。
商品パッケージに記載されている通りの方向で拡張基板を接続すれば、下の図にあるRaspberry Pi Zero 2Wのピン配置がそのまま平行移動してスルーホールで実装できる形になります。
ピン配置図を見ると、2ピン、4ピンに5Vの記載があります。本来のUSB給電だとここから5Vが出力されるのですが、今回はGPIOから給電したいので、逆にこのどちらかに5Vを供給します(今回は4ピンを選択)。GNDはどこも共通ですが、利便性を考えて一番4ピンに近い6ピンに接続すると良いでしょう。
拡張基板の表面(ピンソケットがつかない側の面)にDCDCを配置し、図のようにRaspberry Piへの5Vラインを取り回します。今後、IMUを搭載するなど機能を拡張していくことを考え、できるだけ省スペースとなるように実装を行ってください。前述したように、DCDCの出力がRaspberry Piの4ピン、グラウンドが6ピンと接続します。
基板の裏面には、DCDCへの入力の6.6Vラインを配置します。拡張基板の取り外しを容易にするため、この電源ラインは汎用の2ピンコネクタによって着脱が行えるようにします。
※今回は汎用ピンコネクタを使用しましたが、これだと逆接続ができてしまうので、ポケットヘッダ&ハウジングを使っても良さそうです。
基板の裏面はRaspberry Piと面する部分ですので絶縁のためのカプトンシートを貼っておくと安心です。
さらに、拡張基板まで給電を行えるようにKXR純正のスイッチハーネスを改造します。+側はスイッチの出力側から分岐し、-側はもとのハーネスの黒線の途中から分岐します。分岐からコネクタまでの長さは15cm程度とり、また分岐した部分はしっかりとビニールテープなどで絶縁保護してください。これにより、一つのスイッチでロボット本体とRaspberry Pi側への電源供給を同時にコントロールできます。
システム全体の配線
では、最後にシステム全体の配線を行っていきます。
DCDCを搭載した拡張基板をRaspberry Pi Zero 2Wに正しい向きで装着した後、前回の記事で組み立てたKXRの頭部ユニットに搭載します。この際、Raspberry Piのコネクタがすべてロボットの背中側に向くようにしてください。
改造したスイッチハーネスをKXRのバックパック下部に元通りに取り付け、分岐した電源ラインをバックパック上部の隙間から引き出します。2ピンコネクタは、極性に注意しながら(この記事通りの配線だと奥側が+の赤線)拡張基板側のピンヘッダに装着しましょう。
頭部ユニットの蓋をねじ止めし、最後にUSBケーブルの配線を画像の通りに行います。USBハブから伸びたmicro-USBケーブルをRaspberry Pi に接続し、WebカメラのUSB type-Aケーブルと、シリアル通信モードのDual-USBアダプタをUSBハブに接続します。Dual-USBアダプタは3線ケーブルでRCB-4 miniと繋いでください。
以上で配線は完了です。お疲れ様でした。
次回
次回は、いよいよ電源を入れ、このシステムを動かすための環境構築を行っていきます。